こちらのページでは、外部レコーダー/プレーヤーからPCに流し込んだトラックの頭合わせについて、実際にさんなべが採っている方法を御紹介します。
以上のような諸症状に有効です。
1.このコーナーで想定するセッション
まず、次のようなセッションを想定して話を進めていきたいと思います。
- 主にPC上でレコーディング、Mixingを行っているが(宅録)、
外部スタジオに出向きドラムスのトラックを収録したい。- 外部スタジオではデジタルHDレコーダー(VS-840)を使用する。
- VS-840の同時録音可能トラック数は4トラック。
- スタジオにて収録したドラムス4トラックを持ち帰ってPCに流し込む。(SMPT/MIDI同期無し)
- PCに流し込まれた4トラック(未同期)を同期させシーケンサーに張り付けMixする。
ドラムスに限らず、ピアノ、E-ギター、ボーカル等々、生楽器の収録が自宅ではできない人は多いはず。
で、外部スタジオに出向き収録することになるんですが。よくある話ですね。上記のようなセッションを想定して次に進みます。
2.外部に持ち出すシーケンスデータの作成
自宅にて作成したシーケンスデータをVS-840に移して、VS-840でそれをモニターしながらドラムスをプレイしないといけませんので、そのデータをPC上で作成します。
所謂カラオケ(仮歌)ですね。
スタジオで収録されたドラムストラックは後でシーケンサーに流し込む予定ですので、シーケンスデータは勿論PC上で組むことになります。
ソースとしては、
- クリック
- 仮ベース
- メロ
- 仮ドラム
- 必要ならばその他のトラック
この辺を中心にプレイ時のモニターを想定してMixし、PC上でオーディオデータ化しておきます。(以後これを、仮オケと呼びます)
さて、できあがった仮オケをVS-840に流し込むわけですが、ここでちょっとした加工を仮オケに施します。
具体的には
- 仮オケファイルの冒頭に信号音を挿入する
- 仮オケファイルの終始点に信号音を挿入する
です。
こんな感じの信号音を使ってみます。
440.1sec.wav
(wave形式ファイル. Size:172kB, 16bit/44100hz/stereo/1sec. Sauce:440hz sighn signal @ -10db)こういった信号音を仮オケファイル冒頭と、終始(ドラムス収録時の余韻の余裕を見て終始点を設定)に挿入します。あ、勿論波形編集のソフトなんか使ってやるわけですが、Windows標準のサウンドレコーダーでもできる作業です。
で、信号音付加後の仮オケの波形はこんな感じになるわけです。(冒頭部)
それではいよいよVS-840に仮オケを流し込みます。
(信号音でレベルあわせもできますが、所詮はモニターですので、そこまで録音レベルにシビアになることはないでしょう。)信号音も含め、任意のトラックに収録したら、いよいよスタジオへ出向けます。
3.スタジオにてドラムス収録
いよいよドラムスの収録です。
2.でVS-840に収録した仮オケをモニターしながらドラムスをプレイし、それを収録します。
VS-840は2trモニターしながら、4tr同時録音が可能です。
サブミキサを組んでマイクいっぱい立てるもよし、鳴りの良い箱ならマイク二本にアンビエント二本なんてのも雰囲気ですね。
納得いく音で、納得のいくプレイを収録します。ちなみに、2.で追加した信号音はモニター時にかなり耳に来るので、それを含まない範囲をモニターした方が良いです。冒頭の信号音のお終いから、お終いの信号音の直前まででロケートしてモニターすれば大丈夫です。
収録が済んだら自宅に持ち帰り、PCに流し込む作業です。
4.自宅でPCに流し込みます。
さて、ここからが大問題の流し込みです。
MIDIやSMPT飲ませたレコーダーをスレーブにしてPCをマスターにして流せば話が早いんですが、世の中そんなに甘くない。
VS-840はスレーブになれないのです。(そしてうちのPCも)そこでこの際、同期などと言う考え方は一切忘れてひたすらPCに流し込んでいきます。アナログでもデジタルでもかまいませんが、適切な録音レヴェルでPCにトラックを移植します。勿論2trずつでかまいませんし、そのほうが移植時間を短縮できますね。
さてここがこの章の本題です。VS-840からPCに流し込むソースですが、
必ず”信号音を”含めたデータを流し込む”事が大事になります。上手く説明しにくいのですが、
- 例えばVS-840のトラック7,8に仮歌が入ってるとします。冒頭とお終いには信号音が含まれていますので、その信号音の部分だけトラック5,6に移します。(ダンプ)
- 5,6トラックとドラムトラック(2trずつ)のMIXをPCに流します。
- PC上には信号音を含むドラムトラックが収録されることになります。
PCに移された信号音付きのドラムトラックの波形はこんな感じです。
3.で収録されたトラックが全てPCに移せたら次の段階です。
5.ちょっと編集します。
さて、もうちょっとです。
4.でPCに取り込んだ信号音付きのデータから信号音だけを削除します。
こんな感じの波形を、こんな感じのところで切って、こうします。
ここで重要なのは、きっちり信号音の部分だけを削除するということです。
さもないとひどい結果を生みます。
編集後のソースのサンプル数を各トラックで一致するかどうか見てみることで確認できます。
それでも心配な向きは、2.で作成した仮オケの信号音無しサンプル数と一致するか確認すると確実です。ちょっと注意しないといけないのは、デジタルレコーダーと言えども、結構誤差があるというか、時としていいかげんなものだということを忘れてはいけません。
PCが録音状態の時、何か他の動作をさせたりするとすぐサンプルが落ちたりします。大きく落ちたのなら聴いただけでわかりますが、一つや二つといった細かい単位で落ちることがよくあるようです。ですから、上に書いたようなサンプル数の確認はちょっと面倒でも必ず取っておいた方がよいと思います。
勿論サンプル落ちは本来起こらないはずなんですが、どういうわけか涼しい顔してこぼれます。マシンスペックや環境に依存するところも大でしょうし、アプリの素性もあるようです。
6.いよいよシーケンスデータに張り付けます。
5.で作られた4トラックのサンプル数の一致が確認できたら、いよいよシーケンスデータにトラックを貼ってみます。
ここまで正確に作業をしてきたのなら、きっと上手く他のデータと同期して再生されるはずです。
上手くいけばここで終了です。
もしも上手くいかないときは、次のようなことが考えられます。
- シーケンスデータから生成した仮オケの頭と、シーケンスデータの頭が一致していない(曲頭からいきなりずれて再生される)
- 信号音をドラムトラックから削除するとき、削除のポイントの見極めが甘かった。(曲頭からいきなりちょこっとずれて再生される)
- サンプル落ちしている(徐々にずれる)
などです。
7.最後に
上に書いてきた方法は、ちょっと応用すると他の利用法もあります。
- どうしてもあと2tr足りない、などというときにはノートPCとHDレコーダーの同期無しでの同時収録によるマルチトラックレコーディングが可能になります。追加は何台でも可能です。(編集の手間はその分増えますし、レコーディング時の結線も煩雑になりますが)
- MP3ファイルなどを利用すれば、たとえ相手がマルチトラック環境を持っていなくてもトラックを作って送ってもらうことが可能です。
- 録再同時にできないサウンドボードを使っていても、手間さえ惜しまなければマルチトラックの作成が可能です。(一部環境)
等々、アイデア次第で色々できそうです。
勿論その分手間がかかりますが、いざというときには使えそうです。さて、色々書いてきましたが、僕自身、この方法を考えたのは必要に迫られてでした。そして試行錯誤したあげく自分なりの方法に行き着きました。
僕のマキシシングル”かさねてゆくんだ”も、上記の方法で収録されたトラックがいっぱいあります。なんで上でVS-840を例に取ったかというと、実際に僕が使ったレコーダーだったからです。(Thx to Tohru, Ogawa)「もっといい方法があったぞ」とか、「こうした方が確実で速いぞ」などといったアイデアをお持ちでしたら、是非お気軽にご意見ください。
2001/11/27